2006年06月02日 Fri

男は苦手ですか?【日記】

野口さんは、語学の授業でいっしょの女の子です。おなじ学科だし、去年からいくつか共通の授業を取っていたにも関わらず、僕はほとんどしゃべったことがなかったのですよ。でも、これからも接する機会が増えそうな感じなので、これはそろそろ仲良くなっておかなくては、と考えていたのです。

ただ、問題が一つだけありました。


野口さんが男としゃべっているのを見たことがない


うん、いつ見ても仲良しの女の子としかしゃべっていないのですよ。彼女の顔を覚えてからかれこれ1年以上経ちますが、男としゃべっている姿はビタ一文見たことがない。いつも仲良しグループみたいな人たちとばかりしゃべっている。これはどう好意的に解釈しても、男の僕が仲良くなるのは難しい。つまり、図で示すとこれくらい難しいのです。


野口さんと仲良くなる>>>【越えられない壁】>>>司法試験>東大>京大


そんな、男を寄せ付けない鉄壁のごときオーラを攻略すべく、僕は立ち上がりました。‥‥‥いや、別に、あれだよ?好きとかそういうんじゃないよ? でもなんか、こう、僕のなかのチャレンジ精神のようなものをくすぐるのですよ。とうてい不可能だと思われるようなことにこそ挑戦したくなるのですよ。届かないって言われたってそのままジャンプしたい年頃なんですよ。

まあ、なぜ彼女と仲良くなりたいのかと聞かれれば、ごちゃごちゃ言うより、こう答えるのがもっとも適切だと思う。



「そこに野口さんがいたから」




さて、まずなんと言って話しかけようか悩むわけです。まさか、いきなり「きょうの夜暇?いっしょに夕飯たべない?」なんて言うことはできない。下手にそんなこと言ったら、「えっ?何なのいきなり?あんた何様?」とか言われかねない。そしたら僕はショックのあまり耳から脳が飛び出して死んでしまうかもしれない。


そこで閃きました。

そういえば、火曜日に遠い方のキャンパスで彼女を何度か見かけたことがある。ふつう2回生はそっちの方のキャンパスにはいかないのに、僕とおなじ曜日に彼女も遠い方のキャンパスで授業を取っているのですよ。これは会話のきっかけとしては申し分ないでしょう。おそらくこうなるはず。


「ねぇねぇ、野口さんって火曜日に市内のキャンパスにいるよね?」

「えっ? なんで知ってるの?」

「ときどき見かけるからさ」

「あっ、そうなんだ。グレエくんも火曜日あっち行ってるんだ。何の授業とってるの?」

「3限の○○先生の授業」

「へー、わたしの友達もそれとってるよ!おもしろいって言ってた」

「野口さんは?」

「あたしはねぇ‥‥‥」


って感じで親しく会話できるに違いない。打ち解けたひとときを過ごし、彼女との距離は急接近、キャンパスで顔を合わせたら白い歯をキラーンと輝かせて笑顔で手を振ってくれるぐらいになるかもしれない。よし、これでいこう。


そうして語学の授業が終わったあと、すぐ後ろの席に座っていた彼女の方をふりむきました。もちろん、自然に話しかけるために、あらかじめ彼女のすぐ前の席に座っていたのです。すべて計画通り。夜神月も取り乱すほどに計画通り。幸い、このとき隣の席に座っていた女友達との会話も途切れていました。もう僕と彼女を邪魔するものは何もありません。あそこに児玉清がいたら、間違いなく「アタック・チャンス!」と言ったであろう絶好のタイミング。あとは勇気を出して彼女にアタック‥‥‥じゃなかった、話しかけるだけだ。

いけっ、グレエ!



「ねぇねぇ、野口さんて火曜日に市内のキャンパスにいるよね?」



言った!言った!言ったぞ!
さぁこい! これで文句なくきっかけはできた! あとに待つのは楽しい語らいのひととき、ふたりだけのアバンチュール!



















えっ?なになにっ!?どうしたのいきなり!?






(あっ‥‥‥いや‥‥‥僕はちょっとお話したかっただけなんだけれど。いきなり夕飯に誘ったわけでもないのに、そんなにびっくりすることないんじゃないか? ただの、何気ない、学生同士のふつうの会話じゃないか? 僕はあくまで自然に話かけたつもりだったけれども、無意識のうちに触れてはいけない部分に触れてしまったのかな? いや、さきほどの発言の中にそんなセンスィティブな内容が含まれているなんてありえない)


などと思って呆然とそこに立ち尽くしていると、そこに入ってきたのが野口さんの友人。


「グレエくんあっちのキャンパスの授業とってるんだ。何の授業とってるの?」

「○○先生の授業だよ」

「ああ!それ、順子ちゃんもとってるよ!」

そこで野口さん、

「ああ!順子もそれとってるんだー。まだ2回生なのに」







結局また友人と話し始めちゃったよこの人。しかも、僕、放置されちゃったよ。







きょう、野口さんと話をした時間は実質5秒程度
どうやら、男の僕が彼女と親しくなれる日は、まだまだ遠い先のことになりそうです。
posted by グレエ at 18:13 | Comment(6) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月03日 Sat

願望バトン【バトン】

けい辞典のけいさんから願望バトンがまわってきました。


いやね、一昨日やろうとしたんですが、そのときはLivedoorブログの不調でけい辞典が開けずできなかったのですよ。それで、昨日もやろうとしたのですが、前置きとして書こうと思ったものがそれだけで記事一つ分になり独立宣言を発してしまうというハプニングがありまして、またできなかったのです。ということで、きょうこそ願望バトンをやろうと思います。



1 子供のころの夢は?

幼稚園や小学生のころは夢はありませんでした。しかし文集などで夢を書かなくてはならなかったり、「僕の夢」なんていう腐った作文を腐った教師が書かせようとしたり、周りの大人たちは子どもが夢を持つことを望んでいたようなので、とりあえず適当にパイロットとか答えてました。嫌な子どもだ。

中学校に入ってからはゲームデザイナーや作家や数学者などいろいろなものに憧れましたが、最終的には物理学者になろうと決意。というより、もう自分の生きる道は物理学しかないと確信していましたね。そして数年経った現在は紆余曲折をへて文学部に在籍し、まったく違う分野を学んでいる。人生ってどうなるかわからないよね。


2 現在の夢は?

一言でいうと現状維持です。好きな勉強をして、本を読んで、散歩して、ブログ書いてたらそれで十分です。まあ、興味のある学問分野があるので、職業としては研究者が夢です。


3 2の夢のために必要なことは?

まずは古典的な著作を読むこと。
そして語学の勉強です。


4 なんで2の夢を選んだ?

選んだわけではなく、自然とそうなった、といった感じでしょうか。人にはそれぞれ好みや向き不向きがありますから、僕の場合はおそらく2の夢が合っていると思います。


5 いま欲しいものは?(5つまで)

専門の本。
ピュ〜と吹くジャガー全巻。
歯磨き粉がなくなりそうだから、新しい歯磨き粉。

うん、ほとんど欲しいものがない。


6 上の中でも特に欲しいものは?

専門の本です。


7 それは今すぐ手に入る?

買おうと思えば買えるのですが、3冊セットで15,000円くらいするので迷っております。


8 5を手に入れるため何かしている?

本屋の棚のまえで行き来したり、時々手に取ってみたり、指をくわえて眺めてみたり。


9 神様(神龍も可)が願いを3つ、叶えてくれるなら?

神様の助けなんて要りません。
‥‥‥あっ、でも、女の子にモテるようにしてもらえたら嬉しい。


10、今、1番何がしたい?

これまで通りの日常を送りたいです。


11、誰にこのバトン、やってほしい? (5人くらい)

宗介さん
光さん
13番さん
いまコーヒーを飲んでいるあなた
いまチョコレートを食べているあなた


さて、回答し終わったわけですが、僕はいまの生活に満足しているので非常に答えづらかった。あまり願望のない僕が願望バトンをやるというのはちょっと無理があった気がする。
posted by グレエ at 23:15 | Comment(3) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月05日 Mon

一日のはじまりは挨拶から【日記】

どうもきょうは調子が悪い。


昨日はある行事のために一日中てんやわんやの騒ぎで、おそらくその疲れが残っているせいなのですが、朝から体の具合がよろしくない。そのせいで精神的にも病んでいて、駅前でたむろしているチャラチャラした男女の集団を見たときは機関銃で乱射してやろうかと思った。そのくらい病んでいるし疲れている。

しかしこれにはもっと直接的な原因があったのですよ。きょうの朝のことです。


きょうのさいしょの授業は2限だったのですが、予想通り寝坊しまして、もうどうでもいいしと思いながら優雅にコーヒーを飲んで少々ブログ閲覧をしてから大学へ行ったのです。教室では学生たちが熱心にドイツ語の勉強をしていました。ちょっと気まずい思いで、そこへ40分ほど遅れて入室。

「毎日遅刻していた高校時代が懐かしい。あのころの僕は本物のクズだった」

そんな感慨に耽っていると、先生がある3人組のグループを指差して、あそこでいっしょにおやりなさいと言う。なんか、ドイツ語の教科書を使って会話の練習をしていたのですが、そこでいっしょにやれと言う。そしてその3人組に目をやったのですが、そこにあの方がおられた。そう、野口さんがおられた。


野口さんというのは、語学の授業でいっしょの女の子です。これまでほとんど話したことはなかったのだけれど、同じ学科でもあるし、これから接する機会が多くなりそうだから仲良くなりたいと思っている人です。ただ、彼女が男としゃべっているのを見たことがない。なので男の僕が彼女と仲良くなろうと思ったら、東大医学部に首席で合格するより遥かに難しい。


大学内で顔を合わせたら笑顔で手を振って挨拶をするというのが僕のささやかな夢なのですが、たぶん現時点で手を振ったらびっくりして逃げ出されるか、もしくは冷静に会釈されるであろうという、天文学で言えば150億光年くらいの距離が僕と彼女とのあいだにはあるのです。


さて、その距離を10億光年くらいに縮めるべく、僕は彼女に挨拶をすることにした。まず人間関係の基本は挨拶ですよ。毎日笑顔で「おはよう」と言いあえるようになればもうマブダチも同然。

僕は野口さんのいる3人組の方へ歩いてゆきました。案の定、その3人組は全員女の子で、野口さんは楽しそうに彼女らとおしゃべりしている。しかし、ひるむわけにはいきません。いけっ、グレエ!





「おはよう!」








えっ?あっ!おおおはよ!




びっくりしすぎだ野口! 「おはよう」って言っただけなのに、初対面でプロポーズされたのかというほどにびっくりされました。しかも上の発言、言い切るのに約0.2秒という黒人ラッパー級の早口だったからな。なんかもう、「なんで大して親しくもないお前がいきなりあいさつなんかしてくるんだよ。死ね!いますぐ死ね!喉かっ切ってここで死ね!」ぐらいの感じだった。うん、もう、きょう一日ブルーになるくらいベッコベコにヘコみました。しかし負けるもんか。
posted by グレエ at 22:37 | Comment(2) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月06日 Tue

トノサマバッタ【ゲスト】

バッタ.jpg



こんばんは、トノサマバッタです。グレエは火曜日は忙しいらしく、毎週更新がないので、かわりにおれが更新しようと思います。


ふー。これ、しんどいわ。おれ体が軽いからさ、一文字打つたびにジャンプしなきゃならないんだわ。ジャンプ力だけが自慢のおれだけれど、こう何度も何度も飛んで着地してキー入力すんのってかなり疲れる。


そうそう、疲れると言えばこの前もほんと疲れる出来事があったのよ。天気のいい日だったから、公園の草むらで優雅に飛び跳ねていたの。高く高く空に向かってジャンプすると風が気持ちよくて最高だったの。

ところが、さっきまで砂場で遊んでいたガキがおれに気づいて、おれを捕まえようとすんのよ。いやもう、必死で逃げたね。実はうちの親父、数ヶ月前に別のガキに拉致されて戻ってこなくなっちゃってんの。おれはその二の舞になりたくないから無我夢虫で逃げた。

そしたらなんか、着地した部分にちょうど溶けたアイスが落ちてたの。そんでもう、体中にバニラアイスがべっとりくっついて真っ白になっちゃった。あとで鏡を見てみたらもうバカ殿様そのもの。
誰がバカだ。
posted by グレエ at 01:19 | Comment(2) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月08日 Thu

副流煙【日記】

きのう、大学でヤニ検査というのをやっていたので行ってきました。


僕はちょうど3年前くらいからたばこを吸い始めて、それから毎日欠かさず吸っているのですよ。まあ、浪人中は一日に3本くらいだし、現在も一日に6本くらいなので大した量ではないのですが、それでも3年間ですからね、たぶんトータルで5000本くらいは吸っているでしょう。たばこ一本が10cmだとして、5000本で500mですよ、0.5kmですよ。僕の実家から中学校までの道にたばこを一直線に並べて、それをすべて吸ったことになるわけですよ。


なので、おそらく僕のからだはもうたばこに蝕まれているはず。もしかしたら、肺の色なんかカカオ99%チョコレートみたいになっているかもしれない。そんなこんなで、からだがどれくらいたばこで汚れているかを調べるヤニ検査なるものを受けてきました。


ヤニ検査、略して「やにけん」。
たばこの誘惑に負けて喫煙を続け、それでも肺が汚れているかどうか気になるというチキン野郎どもが群がる検査会場に友人2人とともに乗り込んでゆきました。もちろん、僕もそんなチキン野郎の一人。


いっしょにきた友人というのはこの2人。まず一人は半年ほど前から吸い始めたNくん。彼は一日に吸う本数が2、3本という、僕よりも軽いスモーカーで、むしろ喫煙者としては失格と言っていいくらいの人です。もう一人は、たばこをまったく吸わないMさん。検査する必要すらない気がするけど、なんかなりゆきで付いてきた人です。


で、なんかテントが建ててあって、そこで3人、イスに座ってお兄さんの説明を受けます。

「この試験紙の先に唾液を少し染み込ませてください。苦いので指で歯におしつけてくださいね」

言われた通り、その細長いリトマス試験紙みたいなのを歯にくっつけて唾液を染み込ませる。そして、その紙をお兄さんに渡して待つこと1分。まずはNくんの結果発表。


あ、ちなみに、判定は試験紙の色の濃さによって5段階で出るようになっています。汚れ具合が低い方から順に、

 −  →  +−  →  +  →  2+  →  3+

となっている。さて、Nの結果発表。

「こちらの方は+です。少し汚れていますね」

やにけんの前にもらった紙に、+という判定には「少量の喫煙者 受動喫煙 周りに喫煙者が多いようですね」というコメントが書かれていました。うん、まあ、Nは少しは吸っているわけだし、これは妥当な判定でしょう。


次に3年間吸い続けてきた僕の結果発表。
さすがに3+が出たらショッキングだけれども、Nが+なのだから2+ぐらいはいってしまうかも。

「こちらの方は+−です」

おや、Nよりも低い判定が出た。なんだこれ。明らかに僕の方が喫煙期間も量も多いというのに、なんだこれは。判定したのがこのリトマス試験紙みたいな試験紙でなく人間であったなら異議が出されていたところだ。

ちなみに、+−はこんな感じ。

「少し汚れています 他人の煙に注意しましょう」

いやいや、僕自身が吸っているのですが。なんだこれ。


続いてMさん。彼女はあまり検査する気もなかったらしいけれど、来たのでとりあえずみてもらっていました。彼女は喫煙者ですらないので、十中八九、−の判定が出るでしょう。

こちらの方は+です

なんだこれ。喫煙者ですらないのに、3年間吸い続けた僕より汚れているらしい。ちなみに、もう一度+判定のコメントを見てみると、

「少量の喫煙者 受動喫煙 周りに喫煙者が多いですね」

吸ってないのに少量の喫煙者と同レベルに汚れているらしい
なんか、Mさんは飲食店でバイトをしていて、喫煙席に行くときに客のおっさんたちの副流煙をたらふく吸い込んでいるらしいのですよ。副流煙の力って偉大ですね。



結局、常習的な喫煙者である僕より、他のふたりの方が汚れているという意味不明な結果となりました。



Mさん、ドンマイ。
posted by グレエ at 21:23 | Comment(3) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月09日 Fri

伝説【日記】

金曜2限の英語の授業。そこでは毎週、新たな伝説が次々に誕生している。



去年から、英語の授業はいくつか受けていますが、これほどの惨劇ははじめてです。どう考えても、大学中のおバカさんをかき集めてきたとしか思えない。その授業に出ている学生がどうやって受験に合格したのかふしぎで夜も眠れないくらいです。近所の不良が潜り込んでいるのではないか、と本気で疑ってしまうほど。

本日もまた、彼らはいくつもの伝説を生み出してくれました。



授業開始5分前に教室に入ったのですが、「あれ、ここは田舎のコンビニの前でしたか」と思うような光景が広がっていました。後輩が窃盗で少年院に入れられていたり、友達が高校生のカノジョを妊娠させちゃったり、ゼファーのことを尻上がりのアクセントで発音しているに違いないという連中ががん首そろえてイスに座っているんですよ。


大学に来たつもりなのに間違えて族の集会に来てしまったのかと思ったけれど、やつらの机の上にはチャンプロードではなく僕とおなじ教科書が出されているのでどうやらここは大学らしい。まあ、そんな学生ばかりでも教授がやってきて授業がはじまります。


この授業も、教科書を使い、それを読んでいって要所要所で先生が学生をさして答えさせるのですが、それがもう、ありえないのですよ。どう考えても、髪といっしょに脳まで脱色してしまったとしか思えない。


文章のなかに regional expressions という単語があったの。これは「地方特有の表現」という意味なのだけれど、これについて先生が学生に質問したの。


「この regional expressions とおなじ意味を表す一つの単語が文章中に出てくるのですが、それを答えてください。中島くん」

「はい」

教科書に目を走らせてしばらく考える中島くん。ちなみに、その単語というのは colloquialisms で、regional expressions のすぐ次の行に書いてあります。数秒の沈黙を破って出てきたのがこの答え。

「unusual expressions ですか!?」

一つの単語だと言っているだろうが。しかも、正解はすぐ次の行にあるのに、なんでわざわざ4行も隔たっているところからその2語を選んできたのかが分からない。脳まで金色に染まってしまったとしか考えられない。


そのあと、扱っている文章の内容から、アメリカの州の話になりました。アメリカの州の名前を言えますか、ということで、先生が一人一人学生を指名してゆきます。まず僕が「コロラド」と答える。次にテキサスだとかイリノイだとか出てきます。しかし5人目で出来損ないのホストみたいなやつが指されてこう言った。

「分かりません」

いや、あなたの脳には州の名前が4つ以下しかインプットされていないのですか。まだ46州も残っているし、ニューヨークとかカリフォルニアとか、有名な州が出ていないではないか。で、そのあと次々と州の名前が挙げられ、15人目くらいだったでしょうか。そこでまた勇者が現れた。


「鈴木くん。州の名前」

「ハワイ」

「それはもうさっき出ました」

「じゃあサンフランシスコ」

「それは州の名前ではなく、都市の名前です」

うん、どう考えても髪といっしょに脳まで茶色に染まってしまっているとしか思えない。


もう、この時点で帰りたくなった。履修中止期間にこの授業をデリートしておかなかったことを激しく後悔しはじめた。しかし、僕はさらなる惨劇を目撃することとなりました。


また教科書を読んでゆくうちに、今度はこんな英語の表現が出てきたのですよ。

 Don't be in such a hurry.

これは「そんなに急ぐなよ」という意味で、それほど難しい表現ではなく、むしろ基本的なものです。これだけ見て分からなかったとしても、文脈から考えてそれしかないわけです。百歩譲って文脈すら把握できていなかったとしても、辞書で調べれば一発で分かる。これをまた先生が学生をさして答えさせようとしました。


「青木くん。この don't be in such a hurry はどういう意味でしょう?」

「わかりません」


青木の脳は腐っているということが判明した。


「では桜井くん。これはどういう意味でしょう?」

「わかりません」


桜井の脳も腐っている。


「大塚くんはどうですか?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥(沈黙)」


大塚は死んだ方がいい






金曜2限の英語の授業。それは、枯れることのない伝説の泉である。
posted by グレエ at 21:55 | Comment(4) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月12日 Mon

ミクシィ【日記】

大学のPCコーナーにいくと必ずといっていいほど数人がオレンジ色の画面を見つめている。

やさぐれるとは、こういうことさ。
そう、ミクシィ


以前から周囲の人間から何やらミクシィという単語が聞こえてきてはいたのですが、僕はずっとそんなものやるまいと心に誓っていました。僕にはブログだけで十分だ、軟派なミクシィなんぞに手は出さねぇ、と。

そんなわけで、大学でオレンジの画面を開いている人間をみると後ろから蹴り飛ばしてモニターに顔めりこませたろか、などと思っていたのですが、事態は急転しました。


きのうの夜、ネットという情報の海の上をサーフィンしていたのですよ。お気に入りのブログやサイトを巡回していました。いくつかのサイトの「ミクシィはじめました」という記事にやや興味をひかれながら‥‥‥。

(い、いや、ででででも、別にミクシィやりたくなんかないんだからねっ!)

ツンデレ風に自制心を働かせていたら、突然ケータイに一通のメールが。しばらく会っていない、地元の友人からでした。

友人「久しぶり〜!元気〜?ミクシィとかやってる〜?」

僕「おお、久しぶり!ミクシィはやってないよ」

友人「じゃあPCのアドレス教えて〜!」

僕「いいよー!abc‥‥‥‥‥‥


はい、ミクシィはじめました。いや、まあ、ね?あれですよ、正直かなりやりたかったの。そんなわけで、これからはこのブログとミクシィの掛け持ちとなります。



ああ、またしてもネット中毒が加速してゆく‥‥‥。
posted by グレエ at 20:45 | Comment(4) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月14日 Wed

ワールドなんとか【日記】

僕はスポーツ観戦は好きじゃない。
だいたいスポーツ自体をあまり好きではないのだから、他人がスポーツしている姿をテレビで観るなんてことは退屈以外の何者でもない。NHK教育の「お母さんといっしょ」の方がまだおもしろい。そういうわけで、僕はまともにテレビでスポーツを観たことがありません。


あれは一昨年だったでしょうか。世の中がアテネオリンピックで活気づいていたとき、そのときも僕はビタ一文関心を持っていませんでした。浪人中で寮に入っており、テレビも新聞もみられないという懲役一年みたいな状態だったので無理もなかったかもしれませんが、たとえテレビを観れる環境だったとしてもオリンピックなんてどうでもいいと思ったでしょう。

まあそんな僕でも「今年はオリンピックがある」という情報だけは知っていまして、夏か秋ぐらいにたまたまそのことを思い出したんですね。そういえばアテネオリンピックはどうなったのかな、って。なので友人にちょっと聞いてみました。



僕「アテネオリンピックっていつはじまるの?」


友人「もう終わったじゃん



僕は世界に置いて行かれた。

いや、開会式がはじまったという情報も聞いてなかったし、メダルを取ったという情報も知らなかったからな、あのときは。ひたすら英文法とかベクトルの勉強をしていたからな。なんか、人間として終わっている。



そして今、世界はワールドカップ一色となっています。ブログでワールドカップについて書いている人もいるし、大学の友人の間でもその話題は頻繁に出てくる。
しかし、例によって僕は何も知らないのですよ。日本のチームについて知っていることと言えばユニフォームが青いってことと、監督がジーコってことぐらいです。選手が誰とか、ほんと分からない。中田、っていたっけ?というレベルです。あ、でも、11人でやるってことは知ってる。



もう、非国民と呼ばれようが国籍を剥奪されようが、文句一つ言えないような日本人失格の僕なんだけれども、これでもドイツ語の勉強はかなり熱心にやっています。ドイツといえば、ワールドカップに関わらずサッカーが国民的なスポーツとして愛されていて、人気が野球とサッカーに二分される日本なんかとか比べものにならない。
当然、ドイツ人はみんなサッカーが大好き。

しかし、僕のドイツ語の先生(ドイツ人)が、他の学生とこんな会話をしているのを聞いてしまった。




学生「先生って授業中にサッカーの話しないけど、ほんとはサッカー好きなんですよね?」



先生「(首を横に振りつつ)興味ない





ドイツ人失格。
posted by グレエ at 21:58 | Comment(3) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月15日 Thu

トラップ【日記】

今朝、トイレで用を足して水を流したときに、その異変に気づいた。いつもならゴーというけたたましい音とともにタンクに水が補充されるはずなのに、まったくその気配がなかった。嫌な予感がして蛇口をひねってみると、やはり水がちょろちょろとしか出ない。うん、水が止まった


いや、でも水道代払ってないから止められたというわけではなく水回りのトラブルが原因だということはすぐに分かりました。だって、水が止まるの入居以来4回目ですからね。(前回止まったときの記事はこちら


絶望しつつしばらく様子を見ていたんですが、10分くらい経ってもう一度試しに水道をひねってみたら、今度はなぜか普通に水が出るようになってました。さっきのは何だったんだ? 一時的なものだったのかな? と思いつつ服を脱いでシャワーを浴びました。これが悲劇のはじまりになるとも知らずに‥‥‥。



ええ、はじめは順調に、いつも通りに水もお湯も出ていたんです。そうしていつも通り髪を濡らしてシャンプーを終えました。さきほど水が出なかったときはどうしようかと思ったけれど、助かった。水のありがたさをひしひしと感じていました。
それから、シャワーでリンスを洗い流していたとき、事件は起こった。




(ん? なんか、お湯が熱い気がする)


(あれ? だんだん熱くなってきてるような‥‥‥)




熱ち〜〜〜〜!






ありえない熱さだった。
僕のマンションのシャワーは、水の蛇口とお湯の蛇口が別々についていて、そのふたつを適度に回すことによってベストな温度にするというめんどうなものなんだけど、水の方が完全に止まっていた。100%のお湯だった。

いや、お湯というのは正確ではない。熱湯といっても足りない。だって、食事のときとか、茶碗にみそ汁の素を入れて蛇口からそのお湯を直接入れて飲んだりしていますからね。みそ汁できるような温度の熱湯が予告もなしに頭にふりそそいできた。すぐ蛇口閉めなかったら大ヤケドしていたところだ。


でまあ、何が起こったのかというと、復活したと見せかけていた水が止まってしまったの。さっきは勢いよく蛇口から出ていたのに、シャワーを浴びだして5分という微妙な時間で止まってしまったの。何のトラップだこれ。


しかもリンスを流している途中で水が止まるという、測ったようなタイミングですからね。ちょうど髪も全身も、流れてきたリンスでべたべたになっているところを狙ってきましたからね。誰かの悪意を感じずにはいられないくらいだった。


でまあ、そんな状態で出るわけにはいきませんので、水が復活することを願ってバスタブのなかで直立不動。素っ裸で直立不動。ときどき水道をひねってみながら直立不動。自分で自分がかわいそうになってきた。
しかし待てど暮らせど水は出ない。まあ、正確にはちょびちょび出ているのだけれど、体を流すには不足すぎる。なので、復活の可能性にかけて我慢していたんですが、マンションの外では天然のシャワー(いわゆる雨)が降り注いでんのな。おちょくられてるようにしか思えない。もういっそのこと素っ裸のままベランダに出てって天然のシャワー(いわゆる雨)を浴びてやろうかとも思ったけどやめておいた。向かい側に女性専用マンションがそびえ立っているからな。こんなところで捕まりたくない。



しばらく我慢していたのだけれど、さすがに寒くなってきましてね。もう限界だと思って、ちょろちょろとしか出てこない冷水で髪と体を流しました。きのうまであんなに熱くて死にそうだとすら思っていたのに、いきなり拷問のような冷たさだからな。自分で自分がかわいそうになった。




朝っぱらからそんな状態で鬱だったんだけれども、今日も大学で授業がありますので、身支度を整えて颯爽とドアを開けて足を踏み出しました。



ビチャッ‥‥‥




廊下水浸し






そんなヴェネツィアのようなマンションの廊下に、長靴を履いた管理人のおっさんが立っていて、こう言い放った。




えらいこっちゃで〜。水道管が破裂したんですわ〜!





何回目だちくしょう。
posted by グレエ at 23:35 | Comment(4) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月18日 Sun

心の扉の先にあるもの【日記】

僕とおなじ学科の女の子に、野口さんという人がいます。
彼女とは、語学など複数の授業でいっしょでよく顔も合わせるのに、あまり親しくなれずにいる。きっと、彼女はまだ僕に対し、心の扉を閉ざしているのでしょう。そんな彼女のかたくなな心を開くため、僕は少しずつ、彼女に歩み寄ろうとしています。


さて、僕はそんな涙ぐましい努力をしているわけですが、このことをおなじ学科の友人たちに話したらどえらい反応が返ってきました。


僕はよく大学内の休憩所みたいなところで、友人たちと「つきあうならどの芸能人がいいか」などという知的な議論を闘わせているのですが、先日もその休憩所で授業後にしばらく話し込んでいました。あのときは友人2人といっしょだったんですが、そこで、学科内の女性の話になったときに、僕が野口さんの話をしたのです。



僕「おれ、さいきん野口さんと話せるようにがんばってんだよね」


A「えっ、グレエは野口さんがいいの?」


僕「違う違う。そういう意味じゃなくて。ただ、おなじ授業いっぱい取ってるのにあんまり話せてないから」


A「いや、野口さんと仲良くなるのは無理



僕「でも、なんとか野口さんの心の扉を開くカギを見つけ出してみたいんだよ」


A「いや、野口さんの心の扉に合うカギはない」


B「っつーかむしろ、鍵穴自体存在してない



僕「ひどいなおい!こっちは努力してんのに」


A「ぜったい無理だから諦めろって!おれだったらはじめから諦める」


B「っつーかむしろ、努力する価値すらねーよ



僕「い、いや、でも、なんかこのまま引き下がって仲良くなれないってのもなぁ‥‥‥」


A「どうせ野口さんの心の扉開けてもなんも入ってないって!」


B「うん、たぶん開けてもトイレだよトイレw






野口さんの評価悪すぎ。
posted by グレエ at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月21日 Wed

ピザ屋【昔の話】

先日、あまりに日差しの強い日が続くので帽子を買いにいってきました。近くの洋服屋まで愛車の原付を時速50kmでぶっとばして行ったんですが、やはり夏に原付で風を切って走るのはなんとも気持ちがよいものです。あの素手でグリップをひねる感覚、はためくTシャツ。また今年も夏がきたんだなって実感できます。


街をひとり、目的のお店まで走っていったのですが、黄色いポロシャツを着てピザの宅配をする原付を見て、ふと去年の夏を思い出しました。何を隠そう、僕も去年の夏から秋にかけてピザ屋でアルバイトをしていたことがあるのです。


ピザ屋がポストに入れていったチラシに「アルバイト募集」という文字を見つけたのがはじまりでした。去年は大学に入学したてで原付も持っておらず、走り屋の血が騒いで仕方なかった。もうバイクに乗りたくて仕方がない。風を感じたい。ウインカーとか出したいし、すり抜けとかもしたい。そんな禁断症状が出ていたときだったので僕はすぐにそのピザ屋に電話しました。時給は750円とかいうなめ腐ったものでしたが、バイクに乗れるならなんでもいい、とにかくバイクの乗せてくれ、という気分だった。


それで履歴書を書いて自転車でそのピザ屋に面接にいったんですが、なんか言われた場所にいってみると別の名前のピザ屋があるの。うん、明らかに店名が違う。しかも、道から店内をのぞいてみると東南アジア系(たぶんインドネシア)の若い男がひとりで働いている。どうしたものかと思ってもう少し周辺を見て回ったんだけど、そこしかピザ屋はなかったので仕方なくインドネシア人のいる店に入ってみました。


「すみませーん」

「ん? ああ、面接の人か。入って入って」


ここでいいのかよ。なんで看板の名前が違うんだ。おかしいんじゃないか。っていうか、それ以上にインドネシア人が流暢に日本語しゃべったのにはびっくりした。しかもその人が店長で、そもそもふつうに日本人らしい。


それから店の調理場の奥のスラム街のごとき休憩所で日本語で面接をしたんですが、そのインドネシア風の店長が日本語でさりげなくこう言い放った。


「時給は700円からやから」


いや、750円って書いてあるじゃないか。750円ですら足下見られてると思ったのに700円て。あのとき僕は殺意すら覚えた。厨房にあるチーズとかぶちまけてやろうかと本気で考えた。大学生になってまで700円はないだろ。


でもまあ、僕の住んでいる場所はバイトできるところも少なく、またバイクに乗りたいという抑えがたい衝動もありましたのでしぶしぶそのインドネシア風の店長のもとで働き始めることに。


ピザ屋の仕事というのは基本的に調理と宅配のふたつに分けられます。すべての店員が状況に応じてどちらもやるのですが、新入りの場合はまず宅配を中心に行う。ピザに飢えた客の電話注文を受け、地図で家の場所を確認し原付で届けるわけです。


うん、やっぱり原付はいい。たとえ仕事とはいえ、青空の下を走るのは気持ちのよいものです。まるで風になったような気分だ。時給は700円だけど。


その仕事、基本的には楽な仕事なんですが、たまにイラッとくることがある。たぶん、これは宅配という仕事のみが持つ欠点でしょう。


ピンポーン

「お待たせしました〜、○○ピザです」

「はぁい、今開けま〜す」

インターホン越しに女性の声が聞こえてくる。うん、この声は明らかに麗しき女性の声。もう、声からしてかわいい。なんか、仕事できただけなのに変な妄想とかしちゃう。あらぬ期待とかしちゃう。

ガチャッ

きた。声だけかわいくて顔はアレとかいうベタなオチはなかった。もう100人に聞いたら100人ともかわいいと答えるような女性。変な妄想とかしちゃいそう。この人もおそらく僕とおなじ大学の学生だろうから、授業でたまたま顔を合わせて、「あの、どこかでお会いしたことありませんでしたか?」「え、そうでしたか?」みたいな。「付き合ってください」「はい喜んで」みたいな。


「いくらですか?」

「ヘヘ‥‥‥。あっ、1350円です」

「う〜んと‥‥‥あっ、50円玉がない」


いやいや、別に千円札2枚でもかまわないですよお嬢さん。などと思ってると、突然部屋の方をふりかえってこう言った。


「ねーマーくん!50円玉持ってない?」

「あ、あるよ。ちょっと待って」


そんで部屋の奥でテレビでも見ていたのであろうマーくんが50円持って玄関の方まで来んのよ。


「ほい」

「ありがとっ(ハート)」


ピザごと死ね


そんな地獄のような出来事が週に3回くらいありました。ほんと、カップルでピザを注文してはならないっていう法律を作ってほしい。そういう公約を掲げた党があったら他の憲法九条とか年金とか関係なく、それだけで投票するね。


そのバイト、しばらくは順調に続けていたのですが、だんだん秋も深まるに連れて寒くなってくるのですよ。夏のあいだこそスロットル全快で風を切りハングオンでギリギリのコーナリングとかして気持ちよく働いていたわけですが、10月とかなってくると夜とか寒くて死にそうになる。考えてもみてください。ふつうに外にいるだけでさえ寒い秋の夜に原付で宅配。仕事というより拷問に近い。しかも時給が700円だからな。あのインドネシア人もピザごと死ね、と言いたいところだけどその前にこっちが寒さで死にそうだ。


ある雨の日の夜のこと。僕はカッパを着ていつものように宅配に向かいました。ただでさえ寒いのに雨が降っていて余計に寒い。仕事というより拷問そのもの。バイトをはじめたときは原付に乗りたくて仕方なかったのに、今となっては1万円やると言われても乗りたくないような状態。なのに時給700円でその日も宅配。


まじで耳とか凍っちゃうんじゃないかと思いながら目的の家に到着。びしょぬれの手袋をはずし、インターホンを押します。

「はーい、ちょっと待ってくださいねー」

すぐにその家の奥さんらしき人が出てきてドアが開く。家の玄関のなかにすこし入ると、そこには暖かい家庭の空気が。一人暮らしで寂しい生活をしている僕にとって、そのありふれた家庭が天国のようにすら見える。


「お待たせしました。2500円です」

「はい。じゃあ2500円ちょうどで」

「ありがとうございました」

「ご苦労様でした」


僕に暖かい言葉をかけてピザをリビングに持って去ってゆく奥さん。リビングの方で「ピザピザー!」とはしゃぐ元気な子どもたち。ふたたび冷たい雨の降る闇夜に放り出された僕。この頬を伝わる液体は雨さ、雨に決まってる。でもなんでだろう? 心なしか、きょうの雨はすこし生暖かいよ‥‥‥。


ってことで、本格的に冬になる前にピザ屋を辞めることを決意。こんな仕事やってられっか。真冬の夜に原付で何時間も走ったらまじで死んじまう。っていうか、それでも時給700円とかありえない。


辞めたい辞めたいと思っていたら神の計らいのごとくバイトを続けられない理由ができまして、チャンスだといわんばかりにインドネア人っぽい店長にそのことを伝えました。まあ、やってられねーとか思っていたわけですけど、数ヶ月間お世話になったわけですから、多少寂しい気分もありました。そしたら、店長、こう言った。


「実はおれもこの店辞めようと思ってんだよ。もともと好きでやってる仕事じゃないし」


店長、まさかの「辞めたい」発言。


「もう社長に辞めるとは言ってあるんだけど、人手が足りないからまだしばらくはやってくれって言われててさ」


店長もどうやらしぶしぶやっていたらしい。いつもはインドネシア人みたいな顔してイタリア人のごとき手さばきで生地をこねて、円形にのばしチーズをのせてピザを焼いているというのに、人の内面はわからないものだ。


そうして冬直前に僕はそのピザ屋をやめたのでした。
もう部屋のなかのカップルを見て寂しい気分になることもない。



宅配のため原付を走らせる同い年くらいの青年をみて、そんな青春の1ページを思い出していたのですが、暖かくなったためか二人乗りでツーリングに興じるカップルがやたらに目につく。うしろの女が運転してる男にがっしりしがみついてたりする。そんなやつらが、一人で原付にまたがる僕を颯爽を抜きさっていったりする。この頬を伝わる液体は汗さ、汗に決まってる。でもなんでだろう? 心なしか、その日の汗はやけにしょっぱかった。
posted by グレエ at 21:18 | Comment(3) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月23日 Fri

大学極秘レポート【日記】

穏やかな日常の中に、狂気が潜んでいる。


正直、僕はきょう見てしまったものをここに書くべきか否か悩んでいる。真実を伝えるべきなのかどうか、躊躇している。しかし一度見てしまった以上、それを秘密にしておくことはできない。僕は危険を覚悟の上で、見たままのことを記述しようと思う。


昼過ぎに大学へゆき、学食で昼食をとると時計の針は午後2時半を指していた。次の授業まであと30分ある。いつもなら、あいた時間はパソコンをいじったり本を読んだりするのだけれど、なぜかきょうの僕は、ふとキャンパスを探索してみようという気になった。いつもは行かない方向に歩き続けて、10分したら戻ってこよう、と考えた。単なる思いつきのようだけれど、いま思うと、あれは「真実を目撃せよ」という神の啓示であったのかもしれない。


僕の通う大学は山の中にある。いや、山の中、っていうか、山一つ分をキャンパスにしてしまったようなところなのです。なので敷地がバカみたいに広くて、キャンパスの奥の方にはめったに行く機会がない。僕は先ほどの神の啓示に従って、キャンパスを歩き始めました。


5分ほど歩くと、さっきまでいたにぎやかな学食などとは一転して人通りもまばらになってゆきます。その辺りは運動系サークルの部室や運動施設などがあるのですが、閑散としている。歩くに従って和やかなキャンパスの空気が感じられなくなり、なんか魔界の臭気みたいなものが漂ってきて胸騒ぎがする。僕が鬼太郎だったら間違いなく毛が直立していたはず。


途中、Y字型の分かれ道がありまして、そこを左にいくとテニスやバレーのコートがあるのですが、そこを右に進みます。すると、ますます魔界の臭気が濃くなってゆくのを感じる。なんかこう、死の影みたいなものを感じた。


僕はずっと歩道を歩いていたのですが、道ばたに親指2本分はありそうな毛虫がごろごろ転がっていました。色は緑だったり黒だったり、生きていてウゴウゴ動いていたり、誰かに踏まれたのか、死んで潰れているのもいるんですが、そんなモンスターたちに次々にエンカウントする。ついでに、雨の日に土から出てきて戻れなくなってアリのエサになってしまったミミズなんかにもばしばしエンカウント。ラスボスのダンジョンかと思うくらい頻繁に出没してきてLR同時押しで逃げたくなるくらい。こりゃあいよいよ何かがおかしい。いったいこの先には何があるんだろう。恐怖におののきつつも、僕はさらに進みます。


すると、目の前に小さな橋があらわれました。一見、何の変哲もない橋。しかし、先ほどから感じていた魔界の臭気はどうやらこの先から発せられているようでした。橋を渡ろうとすると、もう不気味な雰囲気で心が折れてしまいそうだった。ほんと、弱い人なら「ママー!」とか叫びながら一目散に逃げ出していただろう。


念というか、気というか、オーラみたいなものを普段の10倍くらいに増幅してなんとかその橋を渡りきり、息も絶え絶えだった僕の目に飛び込んできたのはあまりに衝撃的な光景だった。


まず、橋を渡りきった左手側に、シャワー棟と書かれた建物が不気味にそびえ立っていたのですよ。勘の鈍い人は、「ああ、運動系サークルの人が練習後に使用とするシャワーだな」と安易に納得してしまうところでしょうが、研ぎすまされた僕の目をごまかすことはできない。

(ここは処刑用の施設に違いない)

橋の前から感じていたあの異様な空気、それが、この建物からは特に強く発せられていたのです。まるで、いつかテレビでみたアウシュヴィッツ収容所とまったく同じオーラが漂っていました。シャワー棟という表札はフェイクであり、実際は処刑場。


また、橋を渡りきったところには広大な運動場らしきものが3つありました。一見すると、学生がラグビーやサッカーをして楽しむための場所のようなのですが、しかし僕の目はごまかせない。運動場には、スポーツ用の道具に似せたいくつもの処刑用具が存在していました。そのいくつかを撮影してきたのでここで公開してみましょう。まずはこちら。

巨大な断頭台.jpg


ラグビーで使う、あのゴールみたいなやつに見えますが、よくよく注意して見るとこれは巨大な断頭台以外の何者でもないことが分かると思います。これだけ巨大なものであれば数十人を一度に処刑することも可能でしょう。次にこちら。

首つりの道具.jpg


これはもう、首つりのための道具としか思えない。もはやスポーツ器具に見せようという気さえ感じられません。いったい何人がここで絶命したのでしょうか。ひじょうに心が痛みます。


さて、ここまででいくつかの処刑道具を発見してしまったわけですが、そもそもなぜ大学のキャンパスにこのような危険な道具が存在するのでしょうか? ほんの10分も歩けば、元気で明るいキャンパスの風景が広がっているのです。カチューシャつけた女の子がチュッパチャップスしゃぶりながらアホな顔して歩いてたりするんです。いったいこの大学はどうなっているんだ?


断頭台や首つり道具を横目に見ながら、何かに導かれるかのように先へ進んで行くと、そんな疑問をいっぺんに解消してくれる現実が待ち受けていました。

フェンスの向こうの囚人.jpg


運動場にフェンスが設けられ、その中に、背中に囚人番号の書かれた服を着て運動をする囚人の姿がありました。この時、僕の疑念は確信へと変わった。


そう、ここは大学のキャンパスの一部でありながら、収容所兼処刑場だったのです


はじめは何がなんだか分からず、処刑道具を目の当たりにしても事態が飲み込めなかった僕ですが、ここまで決定的な光景を見せつけられては自分をごまかすことさえできません。僕の在学中の大学は、実は大学なんかではなく、アウシュヴィッツのような大規模収容所券処刑場だったのでした。


正直、フェンスの向こうでサッカーに興じる囚人を見て、足の震えが止まらなかった。まさか21世紀の日本で、しかも自分の通っている大学でそんなことが行われていたなんて。できれば彼らをそこから助け出したかったけれど、もしばれれば僕まで処刑されるかもしれない。第一、ふつうに見えるこのフェンスにも、逃亡防止用に高圧電流か何かが流れているに違いない。僕は自分の無力さを呪いつつ、涙をこらえながら来た道を引き返しました。


あまりに残酷な現実に耐えながら、僕は頭を整理しようと、この大学について考えを巡らせてみた。すると、これまで気にも留めなかったささいなことが、急に意味を持ち始め、大学という名の収容所のシステムが、はっきりと姿を表してきたのです。


僕の大学のキャンパスには、「通行許可車」というプレートをつけた原付にのって移動する職員が存在します。以前は、ただ単に職員のおじさんがキャンパス内の移動で走っていると思っていたのですが、これは実は逃亡者の監視のためで、もし逃亡者を見つけたら、その原付で追跡し、ふたたび捕縛するためなのでしょう。あの職員たちは、実は収容所の監視員だったのです。


あるいは、大学のキャンパスには門が3つほど存在し、それぞれに監視小屋のようなものがあって、門衛さんが配備されているのですが、あれも実は逃亡を防ぐためのチェックポイントだったのでしょう。


さらに、より根本的なことを言うと、このキャンパス自体、はじめから収容所の併設を意図してつくられたものだったと考えられます。元々僕の通う大学は京都市内に古くからのキャンパスがあるのです。それなのに、20年くらい前に、現在のとんでもない田舎の、それも山一つ分くらいありそうな広大なキャンパスを建設しました。人目の少ない田舎、そして無駄に広いキャンパス。収容所建設にこれほどうってつけの条件はありません。




社会的には大学として認識され、実際にその中では明るく朗らかなキャンパス・ライフが繰り広げられているわけですが、そのわずか数十メートル先に、あのようなナチス時代顔負けの巨大収容所兼処刑場が存在している。まさに、狂気は日常のなかに潜んでいる。






なんてことを考えながら歩いてたら、3限のドイツ語に遅刻してしまった。
posted by グレエ at 19:50 | Comment(2) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月25日 Sun

彼女いるの?【日記】

いねーよボケ!



さて、かなり切れ気味ではじまったきょうの日記ですが、タイトルのこの質問、ほんとにうんざりするんですよ。思えば高校生くらいのころからでしょうか、僕は何度となくこの質問をされてきました。そして、毎回毎回「いないよ」と答えてきた。


いえね、あの、彼女がいないことは置いておくとして、何年も何年も何度も何度もおなじ質問を繰り返しされて毎回毎回おなじ返答をするというのは想像以上に嫌になるものです。しかも、出身地や血液型を聞かれるのと違って、この質問はおなじ人に数ヶ月単位とかでリピートして聞かれますからね。おまえは壊れたラジカセかというくらいにエンドレス・リピートされますからね。そして僕もこれまた壊れたラジカセみたいに「いないよ」の一点張りですから、なんか終わりのない餅つきみたいになってる。


高校生のころは、まあ、ふつうに返答してそれで済んでいたのですが、さいきんはもう、この質問をされると頭にくるくらいでして、手元にデスノートがあったら確実にそいつの名前を書き込んでいる。


つい先日、地元の友人から久々に電話がかかってきたのです。むかしはよくいっしょに遊んでいた幼なじみ。浪人して以来電話でさえほとんどしゃべる機会のなかった彼ですが、その彼から着信があり、電話に出ました。


「久しぶりー! 大学生活楽しい? 彼女できたー?」


いや、この時点でもう抑えがたい殺意が湧いてきましたね。ケータイを逆に折り畳んでやろうかとすら思った。しかしそこは温厚な僕、殺意を抑え、会話を続けます。


「楽しいよ。彼女もできたしー」


うん、嘘ついてやった


「へー、そうなんだ。その子なんていう名前? おれの彼女は翔子ちゃんって言うんだけど」


聞いてもいないのになぜ彼女の名前を僕に報告するのか。はっきり言ってそんなことには塵ほどの興味もありません。


「いや、名前なんてどうでもいいじゃん」


「いまタカシも隣にいるんだけどさ、タカシの彼女はアユミちゃんって言うんだ」


タカシというのも幼なじみなんですが、正直、タカシの彼女の名前とか母親の下着の色くらい興味ないですからね。なぜ聞いてもいないのにそんなことを僕に報告するのか。色ボケしてるんじゃないだろうか。脳ミソまでピンクに染まっているんじゃないだろうか。


ということで、その電話は「死ね」とだけ言って切ってしまうおうかと思ったのだけれど、そこは温厚な僕。適当にお茶を濁しておきました。



まあ、何が言いたいのかっていうと、他人の色恋沙汰に干渉するな、ってことですよ。別に、友人に彼女がいようがいまいがどうでもいいじゃないですか。そんなことに興味を持って首を突っ込んでくるなんて資本主義社会が生み出した心の闇だとしか思えない。聞いてもいないのに報告してくるなんてほとんど狂気の沙汰ですよ。まあ、結局何が言いたいのかっていうと、彼女が欲しいってことです。
posted by グレエ at 00:29 | Comment(7) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

2006年06月27日 Tue

優のこと【フィクション】

優との出会いも、こんな梅雨の季節だった。


3年前、高校を卒業して地元で浪人生活をしていた僕の元に、役場に勤める親戚からアルバイトをしてくれないかという依頼が来た。予備校にも通っていなかった僕は、1ヶ月限定の町役場でのその仕事を引き受けることにした。


はじめての勤務の日、役場の待合室で仕事内容の説明を受けるために待たされていると、そこにもう一人のアルバイトの女性が入ってきた。「はじめまして」と挨拶して、簡単に自己紹介したり世間話をしたりしていたのだけれど、女の人と話すのに慣れていない僕は、役場の職員が部屋にくるまでのあいだ緊張しっぱなしだった。


しかし優と親しくしゃべれるようになるのに、それほど時間はかからなかった。それからは週に5日程度、役場での仕事がはじまった。まずは役場にある倉庫の備品チェックと、投票に必要な道具の準備。僕と優は梅雨のじめじめした空気のなか、冷房もない倉庫で汗だくになりながら投票箱や南京錠の個数を数えたりした。ときどき職員が様子を見にくるのだけれど、基本的にはずっと僕と優ふたりきり。自然、たくさんの会話が生まれる。

「大学生なんですか?」
「いえ、いま浪人中なんですよ。優さんは社会人ですよね?」
「うん、小学校で非常勤の先生やってるの」

彼女は一見高校生のように見えたけれど、当時の僕より7つも年上の25歳、夏のあいだだけ役場でのアルバイトをしているということだった。短大の英文科を出てから職場をいくつか変わっているらしく、その頃は公務員試験を受けるためにアルバイトをしながら勉強中だった。


投票のための準備が終わり、会場ができあがると不在者投票の受付が開始されるのだけれど、僕の地元は人口も少ない小さな町だったのではじめの2日間は投票に訪れる人が一人もおらず、3日目4日目になっても投票者は一桁しか来なかった。僕と優はふたりで受付に座ってただ待っているのだけれど、仕事がないから話ばかりしていた。


高校生卒業まで女の子と話すことさえほとんどなかった僕には、彼女とのなんでもない会話が楽しくて仕方なかった。優は中学生のころニュージーランドに留学していて、そこの景色が広大で感動した話、以前JALで働いていたころ、バスで出勤中にピンボールみたいな大きさの雹が降ってきて驚いた話、あるいは自動車教習の話や宇宙人がいるかいないかなど、一日中時間を持て余していた僕たちはとめどないおしゃべりに夢中になっていた。投票の受付場所はやはり冷房もないような蒸し暑いところだったけれど、きょうも優に会えるのだと思うと、仕事の日は朝から胸が高鳴ったものだった。


仕事がはじまって2週間ほど経つと、僕と優はすっかり打ち解けて、僕は彼女を名字ではなく優さんと呼ぶようになり、彼女も僕を下の名前で呼ぶようになった。ある日、いつものように額に汗を光らせながら投票所に現れ、笑顔で「おはよう」という優をみて、僕は彼女のことを好きになっている自分に気づいた。


外はかんかん照りの真夏日だったその日、蝉の鳴き声をバックにぽつぽつと投票所に現れる人の受付をしながら、僕たちは飽きることもなくおしゃべりに興じていた。そのとき、優が、公務員試験で出題される数学が難しくてわからないといっていたので、僕はふざけ半分で家庭教師をしてあげましょうかと言ってみた。いや、家庭教師なんてのは口実で、僕はプライベートでも優と親しくなりたかっただけなのだけれど。すると、予想に反し、優は喜んでくれて、次の日曜日に彼女の家にいけることになった。思えばこの頃から、優も僕に好意を持っていてくれたのかもしれない。


約束の日曜日、うだるような熱さの中、僕は教えられた優の家まで自転車をこいでいった。2つ上の姉は東京で一人暮らしをしているとのことで、優は両親と3人で暮らしていた。よく手入れされた小さな庭を抜け、「こんにちは」といって玄関を開けると、いつもよりラフなTシャツ姿の優が階段を降りてきて出迎えてくれて、部屋に招かれた。数学を教える、というのが目的だったはずなのに、結局僕たちは雑談してばかりでちっとも勉強は進まなかった。けれど、その日以来、僕たちの仲は急接近していった。

「ねぇ、明日プールにいかない?」

僕が彼女の部屋にいって3度目のときだったろうか、カルピスを飲み終えた優がそう言った。僕はもう、自分が浪人生であることなんて忘れていて、喜んで「いく」と答えた。コップのなかの氷が溶けて、カランと音をたてた。


次の日、ふたりして自転車で地元のプールにいった。町営だったそのプールは50メートルのプールが一つあるだけの味気ないもので、僕たちの他に客は10人もいないくらいだった。着替えを終え、女子更衣室から太陽の照りつけるプールサイドに姿をあらわした水着姿の優は、いつにも増してきれいだった。役場でのバイトと試験勉強ばかりで室内にこもりきりだった僕と優は、50メートルのプールで思い切り泳いで、思い切り日焼けした。


その日の営業が終わるまで泳いで疲れきった僕たちは、自転車を押して歩きながらプールをあとにした。やや日も暮れて少し涼しくなり、頬をなでる風が心地いい。しばらくして、優の家の前まできた。

「きょうは楽しかったね」

と僕がいうと、彼女も笑顔でこたえる。

「だいぶ焼けたね。わたしたち、受験生なのに」
「また遊びに行こうよ」
「うん」

近くに田んぼでもあるのだろうか、カエルの鳴き声が聞こえてくる。カエルの鳴き声だけが。優が「うん」と言ってから、僕たちの時間は止まってしまった。このまま優と別れてしまうのが寂しくて、さよならの一言が出てこなかった。優は、ふしぎそうな顔をして僕を見つめている。僕は抑えきれない感情にうながされるまま、彼女の唇に自分の唇を重ねた。永遠とさえ思えるようなキスのあと、僕は「またね」と言って家に帰った。自転車で通り過ぎるその日の夕暮れの街は、いつもとは少し違って見えた。


7月も半ばにさしかかった頃、役場でのアルバイトも終わって、優と仕事の上で会うことはなくなった。しかし週に1度は必ず僕が彼女の家にいって勉強を教え合うか、ふたりでどこかに出かけるようになり、交際は順調に続いていった。優は秋の公務員試験に晴れて合格し、ふたりがバイトをしていた役場で正式に働けることになった。


優との交際はうまくいっていたのだけれど、僕は自分の勉強がおろそかになっていることに危機感を抱き始めていた。女の子とつきあうなんてはじめての経験で、僕には優のことしか見えなくなっていた。自室で英語の長文を読みながらも、頭は優のことでいっぱいで、英語なんて頭に入ってこない。彼女の部屋で英語を教えてもらったとき、優が僕の参考書にすみにいたずらで書き込んだ変なクマの絵ばかり目に入ってきた。


冬、センター試験まであと1ヶ月となったとき、僕はとうとう優にきりだした。

「受験までもう少しだから、ぜんぶ終わるまで、しばらく勉強に集中したいんだ」
「うん、その方がいいよ。がんばってね、応援してるから」

彼女の笑顔を見るのは、その日がさいごになった。


センター試験を皮切りに、受験の季節がはじまった。あの日以来、優と直接会うのはやめて勉強に集中したのだけれど、どう考えても遅かった。夏から秋にかけての遅れは取り戻せるはずもなく、どこの大学の試験でも苦戦を強いられた。センターでは失敗し国立大学を断念。私立に望みをかけ、東京の大学を5つ受験したがどれも自信があるとは言えない出来だった。受ける大学受ける大学、次々に不合格となり、いよいよ3月中旬、さいごの合格発表の日、掲示板の数字の羅列のなかに、僕の受験番号はなかった。


夜、優に結果報告の電話をする約束になっていたのに、発信のボタンが押せなかった。ケータイを放り投げて、ベッドで仰向けになった。

(おれはこの半年、何をやってきたんだろう? 優に夢中になってばかりで、勉強が手に着かなかった。優になんて言えばいい?)

からっぽの心で天井を見つめていると、耳元のケータイに着信があった。画面を開いてみると、そこには優の名前。心の準備ができないまま電話に出た。

「もしもし、きょうの結果どうだったの?」
「だめだった」
「そうか。残念だったね」

彼女の悲しそうな声が胸に突き刺さる。

「ごめん、こっちから電話するって言ったのに」
「ううん、いいよそんなこと」

どうして優はこんなにやさしいんだろう? 僕は優に夢中になっててどこにも合格できなかったようなだめな男なのに。僕なんかが優といっしょにいていいんだろうか? 僕は優にふさわしくない人間なんじゃないか? そんな疑問がふつふつと湧いてきた。

「ねぇ、優」
「なに?」
「おれたち、もう終わりにしようか?」
「えっ」
「このままじゃおれ、どんどんだめになっていく気がする。優のことはすごく好きで、ずっといっしょにいたいって思ってる。でも‥‥‥」
「わかった。もういい」


これが、優とのさいごの会話になった。あまりにもあっけなくて、あまりにも悲しい別れ方。明け方になり、空が白んでくるまで、涙が止まらなかった。


4月、僕は実家を出て予備校の寮に入ることにした。優との思い出が詰まった地元にいるのは、正直苦痛だった。田舎を絵に描いたような故郷を離れ、都会で新しいスタートを切った僕。寮の仲間と生活をともにし、僕は生まれ変わったかのように勉強に打ち込んだ。まるで優のことを忘れようとするかのように。


あっという間に一年が過ぎ、ふたたび受験の季節。今度は東京の大学は一切受験せず、関西に行くことを決めていた。これも、なるべく優から離れたかったからだ。遠く離れた土地にいき、人生をリセットしてやり直したかった。受験の結果、一年の努力が報われ、京都の私立大学に合格。関東の地元から400キロ以上離れたこの地で新しい生活がはじまった。


京都に来てから1年と3ヶ月、大学での勉強も充実しているし、友人もたくさんできた。望み通り、新しい人生を歩みだしたのだ。けれど、ときどき、優のことを思い出してしまう。考えてみると、僕が優に「好き」といったのは、あのさいごの電話のときだけだった。さいごのさいご、別れ際に言っただけだった。


もっともっと、僕の気持ちを伝えておけばよかった。
もっともっと、口に出して、愛してるって伝えればよかった。



FINE














この雑記は妄想であり、実在の人物、団体とはほとんど関係ありません。
posted by グレエ at 02:05 | Comment(6) | TrackBack(0) | edit


→人気blogランキング

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。