2006年07月26日 Wed

勉強ノススメ【日記】

学校の勉強って大事だと思う。


大学入学以前、つまり小中学校、高校、そして浪人の日々は、どちらかというと勉強はやらなければいけない義務だと感じる人が大半でしょう。僕の場合はそれほど勉強が嫌いではなかったから、高校時代を除けば順調に、どちらかと言えば楽しんで勉強をしていたのだけれど、周囲の人々にとっては苦痛でさえあったようです。

「勉強したくない」
「つまらない」
「なんでこんなことをしなくちゃいけないんだ」
「こんなもの、社会に出たら役に立たない」
「センコー死ねハゲ」

と、ほとんどの人は勉強をする意義を感じられず、せいぜい受験を突破するための義務であると考えていたようです。


しかし、僕はこれに異議を唱えたい。勉強というのは、ただ受験のために知識を暗記するだけではないのです。受験さえ通過すればぜんぶ忘れていい。決してそんなチャチなものではないのです。20歳前に勉強によって身につけた知識や思考能力が、僕たちを幸せに導いてくれることもあるのです。


例えば、ある男性が自分の部屋でアイスのピノを食べながらこう思ったとします。

(このピノ、横にすると台形に見える。台形の面積の求め方は確か上底足す下底、かける高さ割る2、だったっけ。懐かしいなあ‥‥‥)

不意に蘇る小学校高学年のときのセピア色の思い出。そう、台形の面積公式を覚えた頃、彼はまた恋というものを知ったのでした。


片想いの相手は、おなじクラスの舞子ちゃん。彼女のことが気になりはじめたのだけれども、恥ずかしがり屋の彼はなかなか話かけることもできません。廊下ですれ違うだけで、顔が真っ赤になってしまう。


密かに思いを寄せる徹ができることと言ったら、給食で彼女にだけ多めによそってあげたり、勇気を振り絞って「おはよう」の挨拶をする程度。好き、もっといっしょにいたい。幼く純粋な感情は積もってゆくのだけれど、彼には彼女を遠くから見つめることしかできません。


そうしてふたりは小学校を卒業し、そのまま地元の中学校へそろって進学。はじめは心細さもあって、幼なじみのふたりの距離は急接近。これまで舞子を遠くから見つめるだけだった徹も、休み時間ごとに彼女と語らうようになりました。あるときふたりで本屋に買物に行ったのをクラスメイトにたまたま目撃され、徹と舞子は付き合ってるんじゃないかという噂まで教室を飛び交います。

「うるさいな。そんなんじゃないよ!」

男子たちのしつこい冷やかしに反論する徹。けれど、内心どこかくすぐったいような、喜びに似た感情があったのでした。


徹と舞子はデキている。そんな噂が出回り数日、徹は舞子の変化に気がつきます。いつもは明るくて元気いっぱいの笑顔を振りまいている舞子。どんなに憂鬱でも、心を明るく照らしてくれる舞子。そんな舞子が浮かない顔をしています。

「おはよう舞子」
「‥‥‥‥‥‥」
「どうしたの? 元気ない?」
「‥‥‥ねぇ、もうあんまり話しかけてこないで」

目も会わせず、机に突っ伏しながらポツリと言う舞子。数日以来の噂に舞い上がっていた徹の胸に、彼女の一言が突き刺さりました。なんで? なんで昨日まであんなに仲よかったのに、急にそんなに冷たくなるの? 状況を理解できない徹。思春期の舞子の繊細な気持ちを理解するには、徹もまた若すぎたのでした。


それからは徹はクラスの男子、舞子はクラスの女子とだけ遊ぶようになり、ふたりのあいだの溝は小学校時代以上に深まってゆきました。いつしか徹の好意も薄れ、芽生えかけていた舞子の徹への気持ちも消えていってしまいました。


疎遠なまま迎えた中学の卒業式。ふたりは別れを悲しむでもなく、それぞれ別の高校へと進学しました。まったく違う場所で、まったく違う仲間と高校時代を送るふたり。徹も舞子も、お互いのことはすっかり忘れて、新しい恋に夢中になり、別々の人生を歩んでゆきました。


台形をしたピノを見つめ、そんな遠い昔の甘酸っぱい恋を思い出す徹。

(あの頃のおれは本当にバカだった。クラスの男子にはやし立てられる舞子の気持ちも分かってやれなくて‥‥‥)

ピノが溶け出し、徹の指を伝わる液体のバニラアイス。

「なにボーっとしてるの? カーペットまで汚れちゃうわよ」
「あ、ごめんごめん」
「そろそろ式場決めて予約しなきゃなんだからね。ちゃんと徹も考えてよ」
「悪かったよ舞子」

別々の大学を卒業した徹と舞子は、就職先の職場で奇跡の再会を果たしたのでした。そんな彼らが、来月、ついに結婚します。


という具合に、学校の勉強をちゃんと身につけることで幸せが訪れることもあるかもしれないので、ちゃんと勉強しましょうね。
posted by グレエ at 21:20 | Comment(6) | TrackBack(0) | edit


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