2006年10月04日 Wed

左側の席【日記】

秋学期もダルい授業がはじまった。そうおもった。


今にも卒倒して救急車で運ばれるんじゃないかと心配になってしまうほど常に具合の悪そうな教授のラテン語の授業だ。春学期にもその教授の授業に出ていたのだが、まるで内容は身に付かなかった。が、単位の関係で秋もその教授の授業を取らねばならない。その授業の単位を取得しなければ3回生でもっとおもしろい別の先生の授業を取らせないもんね、という大学側の陰湿な嫌がらせに屈したというわけである。そんな僕は弱虫かい?情けないっておもうかい?


僕は圧倒的な大学の権力にひざまずき、己の無力さに涙を流した。ああ、僕はなんて非力で小さな人間なんだろう。授業一つ放棄することさえできないなんて、笑っちまうよ。僕は涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら、引きつった笑いを浮かべていた‥‥‥。と、そのとき、僕を呼ぶ声がした。

「グレエくん」

いよいよ頭がどうかしてきやがった。目の前に天使が見える。しかしお迎えにしてはまだちょっと早いんじゃないか?

「久しぶり!」

違う。それは、お迎えではなく、幻覚でもなく、実体を持った人間だった。それは、2ヶ月ぶりに顔を会わせた塩田さんだった。

「久しぶり!」

それから、彼女が僕の左側の席に座り、お互いに留学中の話をしたり(彼女は南米の某小国に行っていた)、ラテン語の先生の悪口をいったり、サークル活動(彼女とはおなじサークルに入っている)のことを話したりした。


彼女はあいかわらず充実した日々を過ごしていて、そうしてかわいらしく、僕は隣で会話しているだけでのぼせてしまうのだった。僕は彼女の微笑み一つに心を奪われ、おとなしくなってしまうのだ。


そんな僕は弱虫かい?情けないっておもうかい?しかし、そうだとしても、そのときかんじた無力さは、心地よいものだった。
posted by グレエ at 23:38 | Comment(3) | TrackBack(0) | edit


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