2006年05月17日 Wed

VSヤクザ【昔の話】

5ヶ月前に実家に帰ったとき、ちょっとショッキングなことを母から聞きました。


僕「親戚とか知り合いで、俺以外に関西にいった人っていないの?」

母「親戚の○○くんが大阪にいるよ」

僕「へー、大阪で何してるの?」

母「ヤクザになったらしいよ


いや、シャレにならん。
サラッととんでもないこと言ったよこの母親は。

小さい頃はいっしょに遊んだりしていたのに。このごろほとんど会わなかったとはいえ、あの人が‥‥‥。うん、僕より3つくらい上で、いいお兄さんだったのですけどね。人生って分からないですね。


あと、僕が地元にいたころの友人も一人、その道へ進んでいます。たしかに、中学時代にも問題の多い生徒でしたが、ふたりでしゃべるととてもいいヤツでした。いっしょに遊んだこともあります。高校生になってからも、ときどきは顔をあわせてしゃべったりしていました。不良ではあったけど、まさか本物になってしまうとは‥‥‥。


さて、前置きがシャレにならないですが、きょうは僕がヤクザと命がけでレースをした話。



あれは僕が高校3年のときでした。当時、僕は1年間のコンビニのバイトでお金を稼ぎ、憧れのバイクを買って走り回っていました。もともと知り合いのお兄さんが所有していたバイクだったのですが、ほとんど乗らないでガレージに放置してあったので頼んで売ってもらいました。お兄さんは最初断っていたのですが、僕が粘り強く3回目に彼の家を訪問したときには疲れた顔で「‥‥‥いいよ」と言い、快く売ってくれました。

それはイタリアのバイクメーカーであるアプリリア社のRS50というバイク。原付ではありますが、市販されている50ccでは世界最速を誇る一台でした。


その日の夜も、どこへ行くというあてもなく、街をそのバイクで走っていました。気分はもう尾崎豊ですよ。盗んだバイクで走り出す、行き先も分からぬまま、自由になれた気がした、15の夜♪ そう、僕は風になっていた。学校や家にはもう帰りたくない。ファック・スクール! ファック・ホーム! おれはこいつに乗って、自由という名の目的地へ疾走するんだ。


そんなことを、1年ローンで買ったバイクにまたがりながら考えていました。あと1年、バイトからは逃げられないのに‥‥‥。そんな17の夜です。


ある交差点にさしかかったとき、信号が赤だったんですね。僕の前には車が3台止まっていました。僕はその止まっている車を左側から全部抜かして、いちばん前に行こうと思ったんですよ。すり抜けってやつです。これはバイクに乗ってる人ならだいたいやっていることで、僕もいつもしていましたから、このときもスルスルッと抜かして先頭に行けるはずだったのです。


しかし、1台目を抜かしたあと、つまり、2台目の隣まできたとき、道路の舗装が荒れてたの。よくありますよね、道路の端っこのアスファルトがはげてたりぐにゃぐにゃになってたり。で、そんなところに原付で侵入してしまったものだから、バランスを崩してしまったのです。バランスを崩した僕は、バイクごと右に傾いてしまいました。そして、不幸にも僕と車とのあいだには狭いスペースしかない。体勢を立て直すひまもなく、バイクは車の車体にゴツンッとぶつかった。ヤベッ。


でもまあ、軽くぶつかっただけだし、見たところヘコんだり傷になってるわけでもないから、謝れば許してもらえるかな、と思ったんですよ。最悪、弁償しろとか言われたとしても、たいしたことないだろうし。それで、とりあえずドライバーの人に謝ろうと思って車の方を見たんです。そしたらその車、黒塗りのベンツなのよ。すべての窓ガラスにスモークが貼ってあって、いかにもその道の人が乗ってそうなベンツ。そのベンツの窓がウィーーンと下がってゆく‥‥‥。


僕「あ、すみません。」

ドライバー「ぶつかっといてすみませんで済むかコラーッ!



ほーらね

やっぱりそういう人だった。もう、声の迫力が明らかに一般人じゃないです。はじめは素直に謝ろうと思っていた僕ですが、これは相手が悪すぎます。だって、相手は「すみませんで済むか」と言っているのに、どうしたら済むというのか。このままでは殴られるか撃たれるか分かったもんじゃない。ということで、逃げることに決定。


信号待ちしていた残りの1台の軽トラをすり抜け、先頭まできました。そしてすばやくアクセルを回し、全力で加速。さすが原付、車体が軽いだけあって、60kmくらいまではすばらしい加速力です。一方、ベンツは前に1台軽トラがいましたからなかなか追いついてこない。もしかしたら、このまま逃げ切れるかも。


しかし、そう楽観視していたのも束の間、あのベンツ、恐ろしいスピードで前の軽トラを追い越して近づいてくる。僕も80kmくらいは出ていたはずなんだけれども、ミラーに映るベンツはぐんぐん大きくなってくる。あっという間にベンツが僕の右側をかすめるように抜かしていき急ブレーキ。キーーーッという音が静かな夜の空気に響きわたり、路面から白煙が上がる。そして、僕の行く手を塞ぐようにベンツが急停車。あ、僕、死んだかも。


そのとき、自分のバイクは世界最速の原付といえども、所詮は原付だということを思い知らされました。こちらのエンジンは50ccですが、あっちは数千ccですからね、排気量が何十倍も違う。普通に張り合ったら勝てるはずがない。スピードで振り切ることは不可能です。となれば、狭い路地に入って相手をまくしかない。しかし、その辺りの細い道はよく知らなかったんですね。下手にそんな道をスピード出して通ったら事故になるかも知れないし、行き止まりになってしまうかも知れない。

あ、やっぱ死んだかも。


そのとき僕を救ってくれたのが、さっき抜かした軽トラのドライバーでした。この危険な状態を察知して、抜け道を教えてくれたのです。

「この細い道を上がって行けば、またこの道に戻って来れるから」

つまり、いったんその細い道を上がってあのベンツをまいて、また戻ってくればいい、というわけです。そうして、軽トラが先導してくれたので、僕はその後についていきました。ベンツの方は、大きな車体ゆえか、方向転換するのに手間取ったようでなかなか追いついてきません。そうして少し行ったところで一度止まり、さっきの道に戻れる別の道を教えてもらいました。僕がドライバーのお兄さんにお礼を言っていると、後ろから照らされた。うん、ヤツがすぐそこまで来てる。


教えてもらった道を必死で逃げる僕。
それでもしつこく追ってくるベンツ。

その教えてもらった道っていうのがまた狭くて曲がりくねった道で、夜だから怖いのですよ。はじめて走る道だから先がどうなっているか全然分からないし。しかし、スピードを緩めたら追いつかれる。うん、前にも後ろにも、待つのは死のみ


そんな極限状態で走っていたらまたさっきの道へ戻って来てしまいました。多少引き離したとはいえ、ベンツはまだヘッドライトが見える距離にいる。これ、あんまり意味なかったんじゃないか? 
このままさっきの道を走ったとしてもまた追いつかれるのは目に見えていますから、もうここは賭けに出るしかない。いま走って来たのとは別の細い道に入ってゆきました。もうミラーを見る余裕なんてない。無我夢中で逃走する僕。学校や家には帰りたくないって言ったけど、前言撤回。無事に家に帰りたい


しかし30秒も走らないうちに、目の前に鉄格子が出現。たぶん工場か何かの入り口でした。やっちゃったのよ。見事に行き止まり。グレエ、若干17歳にして死亡か?


なす術もなくその鉄格子の前で呆然としていたのですが、なぜだかあのベンツが来ない。知らない間に差をつけてたのかな、と思ったけれども、気配すら感じない。もし追って来ているなら、ここは一本道で行き止まりですから、すぐに追いつかれるはずなんですが、1分ほど待ってもこないの。どうやら、僕が二度目に細い路地に入った時点で諦めたようでした。ふははっ、ヤクザに勝った!


その日からしばらく、その夜に乗っていた原付に乗るのはやめてボロいスクーターを使っていたこと、そして、逃走劇が行われた道を避けていたことは言うまでもありません。



まあ、あのときは僕にも非があった‥‥‥というか、もともと悪かったのは僕なわけで、あのベンツのドライバーを一方的に悪人ということはできないかも知れません。自分の不注意でぶつけてしまったことに関しては悪かったと思っています。もしかしたら、素直に謝っていたら、許してくれたかもしれません。ヤクザではあっても、親戚のお兄さんや地元の友人のように、実はやさしい心を持った人もいますから。ところで、この前ゴールデンウィークに実家に帰ったとき、母からこんな話を聞きました。


「○○くん(地元の友人)、このまえ車で事故起こして、自分の一時不停止が原因だったのに相手の運転手を殴ったんだって。それで警察に連れていかれたらしいよ」






やっぱり逃げてよかった。
posted by グレエ at 19:59 | Comment(4) | TrackBack(0) | edit


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この記事へのコメント
ふうっっ!
ドキドキしながら読ませていただいたよ(;´Д`)'`ァ'`ァ'
やくざは恐いねガクガク(((( ;゜Д゜))))ブルブル
Posted by 宗介 at 2006年05月17日 21:35
はらはらしながら読みました、情景がありありと…伝え方見習いたいです。
とりあえず逃げ切れてよかったですね…
Posted by らちりた at 2006年05月18日 15:27
ある種の危険運転ですね。逃げ切れてよかったですねぇ。
Posted by 光 at 2006年05月18日 19:58
>宗介さん
話しても分かり合えなそうな相手というのはホント怖いです。

>らちりたさん
逃げ切れていなかったら今頃ダムの底に沈んでいたかもしれません‥‥‥。

>光さん
逃げ切れていなかったら今頃山林の中に埋められていたかもしれません‥‥‥。

無理なすり抜けはやめましょう。
特に黒塗りのベンツがいるときは‥‥‥。
Posted by グレエ at 2006年05月19日 00:14
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